大人は知らない?子どもはみんな知っているがんについて~学校でのがん教育が始まっています~
公開日:2022/06/06
更新日:2022/06/06
突然ですが、質問です。
Q:日本ではどれくらいの人ががんになっているのでしょうか。

上記は、文部科学省「がん教育推進のための教材 補助教材」の一部です。がんは、1981年以降日本人の死因の第1位となっています。2人に1人は一生のうちに何らかのがんにかかると推計され、3人に1人ががんで亡くなっています。がんによる死亡者数は増え続けており、日本人にとって身近な病気といえます。
このような状況に鑑み、子どものうちからがんに関する正しい知識、がん患者への理解及び命の大切さに対する認識を深めることを目的に、学校でのがん教育が始まっています。
がん教育は、学習指導要領の改正により小学校では令和2年度から全面実施しており、中学校では令和3年度から、高等学校では令和4年度から必修化されています。 がんに関する科学的根拠にもとづく理解やがん患者に対する正しい認識を深めるため、医療従事者やがん経験者等の外部講師の活用も行われています。
がんに関する知識は、健康に関する基礎的教養として身に付けておくべきものという位置づけになっているのです。
- ① がんについて正しく理解することができるようにする
がんが身近な病気であることや、がんの予防、早期発見・検診等について関心をもち、正しい知識を身に付け、適切に対処できる実践力を育成する。また、がんを通じて様々な病気についても理解を深め、健康の保持増進に資する。 - ② 健康と命の大切さについて主体的に考えることができるようにする
がんについて学ぶことや、がんと向き合う人々と触れ合うことを通じて、自他の健康と命の大切さに気付き、自己の在り方や生き方を考え、共に生きる社会づくりを目指す態度を育成する。
がん教育の目標(文部科学省「学校におけるがん教育の在り方について報告」より)
中学生・高校生向けの文部科学省「がん教育推進のための教材 補助教材」は以下の9つのモジュールで構成されています。
①がんという病気
②日本のがんの現状
③がんの発生と進行
④がんの予防
⑤検診の意味
⑥がんの治療で大切なこと
⑦がん治療の支援
⑧がん患者の思い
⑨がん患者と共に生きる社会
内容の一部をご紹介します。大人である私たちは、この質問に答えられるでしょうか。
Q1:がんの原因は何でしょうか。
(文部科学省「がん教育推進のための教材 補助教材」https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1385781.htmより)


男性の場合のがんの原因の1位は、「喫煙」です。女性の場合の1位は、「感染」です。主ながんの原因は、大きく分けて「細菌・ウイルス」「生活習慣」「遺伝的原因」の3つに分類できます。「生活習慣」については、自分で気をつけることができますね。

気をつけるべき生活習慣の具体的な内容としては、以下の5項目です。


Q2:なぜ検診を受けなければならないのでしょうか。
(国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診」これから受ける検査のこと(2021)https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/leaflet/screening.htmlより)
がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減少させることです。単に多くのがんを見つけることが、がん検診の目的ではありません。がん検診を正しく受けるためには、「がん検診を正しく知る」ことが必要です。正しい知識を持ってがん検診を受診しましょう。

がん検診受診に関しては、検診を受けることのメリットとデメリットがあることから、適切ながん検診を受診することが重要です。国では下記の5つのがん検診を推奨しており、対象年齢、受診間隔、検査項目も決められています。対象年齢に該当する場合は、症状がなくても定期的に国の推奨するがん検診を受診してください。もし、気になる症状がある場合は速やかに専門の医療機関で診察を受けることが大切です。
(文部科学省「がん教育推進のための教材 補助教材」(令和3年3月一部改訂)https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1385781.htmより)


学校の授業では、先生からこのような問いかけもあります。検診を受けない人の声を知り、自分の大切な人にどう伝え、どう働きかけたらよいかを考える内容となっています。
Q3:がん患者が暮らしやすい社会とはどのような社会でしょうか。

がん患者の方が暮らしやすい社会にするためには、全ての人ががんについて正しく理解することが必要です。子どもたちが勉強しているわけですから、私たち大人もがんについて正しく理解し、がんの予防や検診等に関心をもって取り組んでいきましょう。そして、がんにり患しても誰もが暮らしやすい社会や職場の在り方について、みんなで考えていきたいですね。
【監修】 笠原 悦夫 (JR東日本健康推進センター 所長)
【出典】
・文部科学省「がん教育推進のための教材 補助教材」(令和3年3月一部改訂)
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1385781.htm
・国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診」これから受ける検査のこと(2021)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/leaflet/screening.html
・国立がん研究センター がん情報サービス がん検診について(2019年9月2日更新)
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html