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笠原先生のさわやかコラム vol.65

公開日:2022/09/08
更新日:2022/09/08

「コロナ」で病気が見過ごされないために


JR東日本健康推進センター 所長

笠原 悦夫

 日本では、2020年の新型コロナウイルス感染症の出現から約2年半が経ちました。この間、ワクチン接種や感染対策の定着などもあり、日常生活も活動的なものに戻ってきているように感じます。オミクロン株出現以降、感染者数は爆発的に増加しているものの重症化リスクは低減しており、これから本当の意味での「ウィズコロナ」が始まるのではないかと考えています。
 欧米では一定の感染者発生を許容しながら、新型コロナウイルス感染症流行前の日常を取り戻す動きが進んでいますね。日本でもようやく、活動制限のない夏を過ごすことができました。

 今回は、このコロナ禍で優先度が下がってしまったように感じますが、実はとても大事な疾病予防について、改めてお話ししたいと思います。

 特に取り上げたいのは、日本人の死因第一位としても知られる“がん”についてです。
 国が推奨する5つのがん検診(肺、胃、大腸、乳、子宮頸)についてはご存じでしょうか1)?その受検者数が、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と比べて、2020年は100万人以上、2021年ではやや回復したものの、それでも60万人以上減ってしまったという調査結果があります2)。2019年と2021年の各がん検診受検者数の比較では、胃がん検診の落ち込みがもっとも大きく、続いて、肺がん、乳がん、大腸がん、子宮頸がんと続きます。受検者数減の理由には、検診機関の休止、受検者数の制限、病院や検診会場での内視鏡検査等による接触リスクなどがあります。すでに集団検診から個別のがん検診へと、感染対策をとっている検診機関もありますし、検診は「不要不急」のものではありません。適切な年齢、頻度でのがん検診の受検をお願いします。

 他にも、学校健診で再検査や受診が必要だと診断された児童・生徒(6~18歳)の未受診率増加が問題視されています3)。歯科、眼科、耳鼻科、内科など、全ての科において、新型コロナウイルス感染拡大の影響による受診控えが考えられます。

 大人だけでなく、成長期の子どもたちにとっても、健康はかけがえのないものです。活動制限が徐々に緩和されている今、ぜひご家族で新しい生活様式における健康管理を考える機会を持っていただければと願っています。