7年ぶりの最終赤字確定「令和2年度決算」~健康保険制度が危ない!?~
公開日:2021/06/30
更新日:2021/06/30
令和2年度は新型コロナで大変な1年になったね。
生活も変わったし、運輸業界は旅客の利用が大きく減って今までにない赤字を計上したんだよ。
JR健保も令和2年度の決算は7年ぶりの赤字だったわ。
健保は収入・支出どちらにも新型コロナの影響があって、これまでの決算と比べて大きく変わる数値となったのよ。
これまでは高齢者医療への拠出金が悩みの種だったけど、どこが変わったのかな?
決算をみてみよう。
以前の記事はこちら!
令和2年度決算
一般勘定(健康保険に関する会計)
一般勘定(健康保険に関する会計)は、収入・支出ともに前年度に比べてマイナスでしたが、報酬減による保険料収入の落ち込みが、受診控えによる保険給付費の落ち込みに比べてかなり大きかったことや、高齢者医療に対する納付金が前年度よりも増額されたことが響き、結局約32億円の赤字となりました。
なお、決算が最終赤字となったのは、7年ぶりのことです。
受診控え以上に報酬減の影響が大きかったということね。
保険料収入
保険料収入は、新型コロナウイルス感染症の影響による事業主各社の経営状況の悪化から、標準賞与額を中心に報酬額の大幅な減少により、対前年約52億円の減少と大きな落ち込みとなりました。
被保険者の皆様に支給される報酬額を端数整理した額(毎月の給与は標準報酬月額、ボーナスは標準賞与額)に、保険料率9.0%をかけた額が保険料となりますが、令和2年度は、元々見込んでいた被保険者数の減少に加え、新型コロナウイルス感染症の影響で事業主各社の経営が極めて厳しい状況となり、特に標準賞与額が前年度に比べておよそ2割減と大幅に減少したことなどから、保険料収入が大きく落ち込みました。
表 全事業主の令和2年度における標準賞与額の変化(令和元年度比、JR健保まとめ)
夏 | 冬 | 年間 | 89% | 67% | 79.6% |
---|
保険給付費
医療機関を受診した際の自己負担金を除く部分の給付や、傷病手当金等の各種給付に係る費用である保険給付費は、前年度よりも約30億円の減少となりました。被保険者数の減少や、新型コロナウイルス感染症による受診控えなどが要因とみられます。減少幅は、今年2月に算出した決算見込みの数値よりも大きく、今年1月にふたたび緊急事態宣言が発出されたことが影響している可能性があります。
納付金等と補助金収入
前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金からなる納付金等ですが、前年度よりも約15億円の増となりました。一方で、高齢者医療運営円滑化等補助金の交付額は前年度並みの約42億円にとどまりました。前年度はこの補助金により若干の黒字となりましたが、今年度は補助金を受け取ってもなお赤字を埋めるには至りませんでした。
Keyword:納付金と支援金
納付金(前期高齢者納付金)とは、医療保険毎の前期高齢者(65~74歳の方)の人数の偏りに応じて医療費の負担を調整するために納めるお金のことです。
支援金(後期高齢者支援金)とは、後期高齢者(75歳以上の方)に係る医療費を賄うために納めるお金のことです。
いずれも法律により拠出が義務付けられているものです。
負担が増え続けているんだね…
介護勘定(介護保険に関する会計)
介護勘定(介護保険に関する会計)は、前年度からの繰越金約4億円を含めて約2億円の黒字となりました。しかし、繰越金を除く単年度収支では約2億円の赤字となります。
介護勘定も厳しい状況ね…
保険料収入
介護保険料収入は、保険料率の引き上げにより約3億円増加しましたが、一般勘定と同様に新型コロナウイルス感染症の影響による報酬額の大幅な減少により、引き上げ率に見合った増加は得られず厳しい状況です。
介護納付金
全国の介護費は少子高齢化の進展により一貫して増加を続けています。平成29年度から報酬総額を基に介護納付金の額を決定する「総報酬割」が導入され、令和2年度から完全移行したことにより、相対的に報酬の高いJR健保の介護納付金の額は増加しました。令和2年度は前年度に比べて約3億円の増加となりました。