お問い合わせはこちら

ホームさわやかけんぽ記事一覧笠原先生のさわやかコラム vol.64

笠原先生のさわやかコラム vol.64

公開日:2022/03/28
更新日:2022/09/08

花粉症予防にマスクは有効


JR東日本健康推進センター 所長

笠原 悦夫

 春の訪れとともに、花粉症の時期がやってきました。花粉の飛散量は前年夏の気象条件が大きく影響するそうです。①気温が高い、②日照時間が多い、③雨が少ない、そんな夏の翌年春の飛散量は多くなるといわれています。
 2021年の夏は、北海道ではこの3つの条件が揃い、スギではなくシラカバの花芽形成が多いようで、花粉の飛散が例年の倍近くになると予想されています。本州でも、東北、関東甲信及び東海地方は、北海道と同じような傾向で、スギ・ヒノキの花粉ともにやや多い予想でした。関西以西では、雨量が多かったことから、同花粉の飛散量は、例年を下回るのではないかといわれています。


 花粉症の季節といえばマスクですが、このマスクの効果について、面白い記事を見つけました。今年2月に報告された、福井大学医学部耳鼻咽喉科の坂下医師らのスギ花粉症の研究です。2021年6月に実施した約2万人の県内小学生の保護者へのアンケートの結果、県内小学生のコロナ禍前5年間のスギ花粉症新規発症率は3.1%もあったのに対し、同年は1.3%に減少したというのです。さらに、花粉症による鼻の粘膜症状や、ぜんそく様症状も軽減させていることもわかりました。これは、新型コロナ感染症予防のために、ほとんど100%に近い児童がマスクをして過ごすことで、空中に浮遊する花粉の吸入を防ぐことができたためであり、児童の花粉症予防にマスクの効果があることを示していました。
 最近、マスク着用について、職域や公共輸送の場で布製やウレタン製などに比べ、不織布製の感染予防効果が強調されています。これは、不織布がエアロゾルの吸入を効果的に遮断してくれるからですが、新型コロナ感染症だけでなく、改めて、花粉症予防にも効果が見直されるかもしれません。
 マスク着用義務については、欧米を中心に、レストラン飲食やイベントなどでも緩和されていく方針が打ち出されていますが、学校や公共輸送機関のバスや鉄道などでは、まだまだ一律に緩和には至らないようです。日本の場合には、特に児童・学童以下へのワクチン接種が十分にいきわたることが、マスク着用義務の緩和に必要な要件になってくるのではないかと思われます。